掲載:machi-iro magazine #53

67357413 377659599601026 6601566859407917056 N

和色名:紅鬱金【べにうこん】

Color Code:#cb8347
RGB:R203 G131 B071
CMYK:C25% M57% Y77% K0%

 父との思い出のひとつに、屋仁川のちゃんこ料理屋さんで食べたちゃんこ鍋があります。家族みんなで鍋を囲み、うず高く積まれた食材の中にあったのがアサヒガニでした。有名な力士も、このアサヒガニを食べに島に来るのだという話を父から聞いた記憶があります。

 アサヒガニの特徴のひとつは、何といってもその色です。海老や蟹といった甲殻類は、熱を通すと赤く変色するのですが、このアサヒガニは生きているときから赤い甲羅の色をしています。茹でてあるのかと見間違うくらいの赤さです。

 甲殻類が茹でると赤くなるのは、殻の中に含まれアスタキサンチンという色素によるものです。アスタキサンチンとタンパク質が結合している状態では薄い黒色をしていますが、熱を通すとこの結合が崩れ、その結果、本来のアスタキサンチンのもつ赤色が発色するのです。すると、アサヒガニの骨格にはタンパク質は無いのか?というとそうでもなさそうなので、赤い色の謎は、謎のままです。

 アサヒガニのもう一つの特徴は、その美味しさ。殻の中には身がぎっしり詰まっており、有名力士がこのカニを求めて島に来るほど身は甘く、特にミソは絶品です。味噌汁や鍋に入れると最高です。

 さて、今回私が選んだ色は「紅鬱金(べにうこん)」。アサヒガニの甲羅の色は何色だろう?そう思ってたどり着いた色がこの色です。少し黄味を帯びた温かみのある橙色です。島でも有名なウコンは、ショウガ科の多年草。根茎を漢方薬として用いるだけでなく、カレー粉の中のターメリックという調味料としても利用されていますが、染料としても有名です。ウコンで濃い目に染めた後、紅花や茜で淡く赤みを入れると、この色になるそうです。

 天和二年に記された井原西鶴の「好色一代男」の巻三「是非もらひ着物」には「はだには紅うこんのきぬもの、上にかちん染の布子」と登場します。天和と言えば五代将軍、綱吉の頃。紅鬱金は、江戸の初期からポピュラーな色だったようです。