掲載:machi-iro magazine #50

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和色名:黄支子色【きくちなしいろ】

Color Code:#FFDB4F
RGB:R255 G219 B079
CMYK:C4% M18% Y74% K0%

 奄美の強烈な夏の日差しを受けて緑の房をつけた島バナナは、十分に大きくなったところで収穫されます。切り口からしたたる粘着性の高い汁を触らないよう、収穫は二人がかり。注意深く作業を行います。

 収穫した後は、しばらく納屋や暗い所に吊るして追熟の時間。全体が濃い黄色になり、さらに黒いシュガースポットと呼ばれる斑点が出てくるのを待ちます。皮は最初のころ張りがあったものが、少ししなびた姿に。それが、ようやく食べごろだよというサインです。

 早くて一週間、遅いものだと三週間くらいしてようやく熟した島バナナの完成。夏成りの房は比較的早く追熟し、冬成りの房は実も少し小さく追熟にも時間がかかります。品種としては小笠原種という種類です。

 島のスーパーでは小さな房で八百円から、大きな房になると一万円というものも。そう、島バナナは高級品なのです。バナナの実は、一つの木から(正確には木ではありませんが)一年に一房しか成らず、三年目くらいになると実も小さくなっていきます。

 検疫のために青いうちに収穫され、輸入後に発酵室でエチレンガスによって黄色く色づけされる輸入物のバナナとは、風味が一線を画します。

 房からひとつもぎ取り、丁寧にうすい皮をはぎ、口の中へ。ほおばった口の中には、ねっとりとした舌触りと濃厚な甘味と香りが立ち込めます。

 さて、今回私が選んだ色は「黄支子色(きくちなしいろ)」。植物のクチナシの実で染めたものにベニバナの赤をわずかに重ね染めした、少し赤みがかった濃い黄色です。染料のもとになるクチナシは奄美でもメジャーな植物です。島バナナの色も、暖かみのある南方系の色調でリラックスした気持ちにさせてくれる色ですね。

 クチナシの名は、その実が熟しても割れない、すなわち口を割らないからだという説もあります。こっそりと島バナナを一本食べても、決して白状しないように。結局は、捨てた皮の香りでバレてしまいますけど。