掲載:machi-iro magazine #55

島イロ図鑑 アダン

和色名:藤黄【とうおう】

Color Code:#F7C114
RGB:R247 G193 B020
CMYK:C00% M22% Y92% K02%

 奄美の多くの砂浜で見かけるアダン。道と砂浜の境にあるエリア一体に群生しているポピュラーな植物です。根がタコの足のように伸びていることから名前が付いたタコノキ科で、亜熱帯から熱帯に生育しています。葉には棘があり、浜に降りる道で生い茂っている葉に肌が触れると切り傷になるので要注意です。

 画家田中一村の代表作の一つに「アダンの海辺」がありますが、この作品以外にも一村はいくつかの作品でアダンを描いています。奄美の自然を描く中で、アダンは一村の心を強くとらえたモチーフだったのでしょう。2005年に封切りされた田中一村を描いた映画のタイトルも「アダン」(主演:榎木孝明)でした。

 奄美を訪れて初めてアダンを見た人からよく聞くのは、「あの実は食べられるのですか?」という質問。パイナップルのような見かけをしているので美味しそうに見えますが、繊維が多く美味しくないので今では食べる人はほとんどいません。ヤドカリたちは大好物のようで、アダンの樹の下に落ちた実をかじっている姿をよく見かけます。

 さて、今回私が選んだ色は「藤黄(とうおう)」。少し渋めの黄色です。オトギリソウ科の海藤(かいとう)という植物の樹液を集めて固めた黄色の顔料の名前が由来です。江戸時代には友禅染に欠かせない顔料として使用され、明治時代には日本画や洋画の絵の具として広く使われていたそうです。奄美では同じくオトギリソウ科フクギ属のフクギで染めた色が同じく黄色で馴染みがある色ですね。

 奄美でも愛好家の多いパラグライダーは、浜辺に降り立つこともあるスポーツです。あるインストラクターによると、最初のうちはうまく狙った着地点に降りることができず、アダンの藪に着陸してしまうことがあるそうです。そうなるともちろん、アダンの葉の棘で傷だらけ。大切なキャノピーと呼ばれる翼が傷ついて使えなくなることもあるとか。皆さまどうぞお気をつけて。